機密を保てる国になることが、精神的独立への第一歩だ

 小沢氏の政治資金問題はこのまま尻切れとんぼになるのか、長引くのかは知らないが、少しほっとしている。もし、次の参議院選挙でも民主党が大勝ちしたら、恐いことがおこるのではないかと思っていたから。
 あの人がもっとも実現したいことは、日本を真の独立国にすることだと見ている。独立国でない国の国民には自己責任という観念は生まれない。自己責任という観念を持たない人々に誇りは育たない。 
 その理念はいい。考えていることも正しい。しかし、では、真の独立を目指すために、最初にすべきことは何か。それは、アメリカとの軍事同盟をいったん解消することだ。そのうえで「対等の関係」をつくり直すこと。
 現在の日本は、実質的には、敗戦後の軍事占領状態のままだ。沖縄がいい例だし、アメリカがその気になれば、1時間以内で日本の国会と首相官邸と皇居をミサイルも使わずにつぶすことができる。歴代の政権はそれを認めてきた。そのうえで日本の防衛を委託してきた。
 しかし、アメリカ軍がいなくなった日本で、われわれは平和を謳歌し、誇りをとりもどし、自己責任に目覚めるだろうか。Wはまったくそうは思わない。もし、そうなったら日本人はただパニックにおちいる。それだけ日本人は平和ぼけしたのだ、とも言えるが、たぶんそうではなく、80年前の日本人がすでにそうだった。日本人の幼児性は年季が入っているのです。
 いずれ日本も大人にならざるをえないときが来るかもしれない。しかし、性急にそうなろうとしたら不幸になる。自分たちだけでなく、周りまでも不幸にする。大人になるための第一歩は、半独立状態、半属国状態を解消しようと強引なことをすることではない。それは子どもの発想にすぎない。
 アメリカと対等になることを目指すまえに、しなくてはならないことが、われわれにはある。それは歴史的な負債をかかえたままの周辺国に何事かがおこったとき、自分たちはどう行動するのかの腹づもりを、前もって決めておくことだ。彼らの意志の自由を守ること。それは日本人にとって最低限の責任だと思う。そのことについて相手国の理解を得ようなどとしても、「何をいまさら、一人前の顔をするな。恥を知れ」と言われるだけだ。ましてや、それは公開で議論する事柄でもない。ほんとうに独立国を目指すのなら、非公開で、そんな議論が行われていることさえ知られずに具体策をつめていくことが出来る国になる必要がある。(Wは日本人にはその能力――秘密を守る能力――がないと考えているが)
 過去に植民地化した相手に対して大切なことは、謝ることではない。自分に自分で責任を与えて、黙ってそれを実行することだ。アメリカを追い出したあと、まさか、目の前で起こっていることへの対応策を国連に委託して返事待ち、などということを想定しているわけでもあるまい。
 あの人には観念だけしかない。「平和」も「自由」も「独立」も。大切なのはことばではなく、行為だ。なのに、そのこと自体をアメリカ任せにしたままで、「対等」を口にするのは子どもっぽいだけではなく、ただの欺瞞でしかあるまい。