2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ただの人間として

GFへ 2011/02/27 大昔、Fが、『オレは教師として特別なものをなにも持たない、ただの人間だ。』という意味の手紙を寄越したことがある。なにか悩みか、疑問があったのだろう。まだGと出会う前のことだったんじゃないかという気がする。「ただのままでいろ…

素人教師の述懐

GFへ 2011/02/25 どうやら実質的な仕事は、受験指導をふくめて終わった。あとは、卒業式参列を残すのみ。足かけ35年の教員生活が終わりかけていることにほっとしている。なぜなら、自分は教師には不向きな男だったんだと思うから。どこかで相当に無理をし…

あんぐりまんぐり最終号

記憶に残ることば 2011/02/23○大人と子どものちがいは一つしかない。子どもは自分が誰かを知らない。大人は自分が誰かを知ってしまった人間だ。 自分の悩みごとを人に打ち明けても、それが軽くなるわけではないと悟ったとき、人ははじめて子どもであることを…

エーテル(1)

おやすみ あの娘は行ってしまったよ とてもいい娘だったのにね せめてこっそり見送ろうとターミナルに行ってみたけど 見つけることはできなかった あの娘のことだからきっと そこらに転がっている放置自転車にでも乗って すいすいと隣町へこぎだしたんじゃな…

それは違う

それは違う それは違う 私は強欲なのです 数えられるものでは飽きたらず まるっきりはっきりしない甘美なものを狙っているのですそれは違う 私は逆しまなのです ダイヤモンドを散りばめた時計をちらつかせている人をせせら笑って たった一滴の水を探している…

しじまのうた

しじまのうた いや、もう語ってはならぬ ことばはもう置いてゆけ いや、もう残してはならぬ ことばをただ音階とせよ 語るよりも 風がお前に教えたことを思い出せ 残すよりも 波から伝わったことを反芻せよ お前は風 お前は波 いや、お前が単なる階調となった…

夜よねむれ

夜よねむれ 思い出はとっくに消えようとしている 喪われるものたちの記憶をひきとめてはいけない 天候の推移にも昼夜の交代にもかかわらず いつも世界は光りにあふれていたのだから 小さい者たちへの呼びかけにみちて明日というものをどうして知ってしまった…

長木誠司『戦後の音楽』

「当時の社会、文化情勢を十分に理解せず、また日本の味わったあの戦争期の厳しさを知らず、デスクのうえで考えている」という佐々木氏の批判は、直接は戸ノ下氏への批判として書かれているが、脈絡上私にも波及していよう。「当時の社会、文化情勢」を、わ…

井の中の蛙になれ

2月13日反省会のつづき 2011/02/14 月曜日の自分の仕事は、10時前にすべて終わった。「じゃ、」と、一昨日列車のなかで読みかけていた中薗英助『裸者たちの国境』を開く。が、「此処はこの本を読むべき場所じゃない」。 知では読めない。情でも読めない。な…

大塚先生一周忌

GFへ 2011/02/13 大塚先生の一周忌。先生達とお線香をあげてきた。Gの手紙も舛さんの了解をとって仏前に供えてきた。あとで家族の方が読んでくだされば、きっと喜ばれることだろう。 神戸に住んでいるという息子さんの家族は、今朝帰るつもりだったのに、…

三好十郎のこと

2011/02/11 GFへ 睦五郎という俳優を覚えているだろうか。ムツミゴロウと読むのだが、自分は長いことムツゴロウと名のる有明海沿岸出身の役者だとばかり思っていた。本当は宮城県の出身らしい。 『逃亡者』のデビット・ジャンセンの声だ、と言ったら多分思…

世の中に両目の目玉焼きというものがあったのか!

GFへ 映画を思い出しはじめたら、とまらない。 小学校時代、ときどき映画会があった。その日は暗くなるまで待ってから講堂で映画を見る。娯楽映画もあったが、いわゆる教育映画なるものが当時はあった。 望月優子の母物はけっこう辛かった。荷車を引いてい…

韓流三題

GFへ 上でなにかやっていて、そのまま老眼鏡をかけたままで下に行ったら、何やら時代劇があっている。 ――また、韓国の時代劇か? ――なん言いよるとね。よう見てごらん。 テレビに近づいてみると、日本の衣装に見える。じゃあ何語をしゃべっているんだと良…

『座頭市』第1作

GFへ 映画の話をしたついでに、あと一本の大好きな映画を付け加える。 『座頭市』の第1作目だ。 市はある町で、厄介になる。世話を焼いてくれる方の所望で居合い切りを実演する。見ていた者たちは、なにか異様なものを見るような目つきで市をみる。 目の不…

過去をもつ愛情

GFへ いよいよ押し迫ってきて、映画愛好会の最終回をどうするか考えた。 最後は、とっておきの『過去をもつ愛情』でしめることにする。例の、アマリア・ロドリゲスが出てきてファドを歌うフランス映画だ。 イギリスのお針子だった美しい女性が貴族のおじい…

病床やおもちゃ併べて冬籠―子規―

GFへ 正岡子規『仰臥漫録』(岩波文庫)読了。開いたとたん、まず、恐ろしいと感じた。活字なのにナマそのものだ。。若いとき、なぜ『病床六 尺』だけで満足したのだろう。(理由はわかっているんだが) こういうものには、やはり「読む時機」というものが…