2011-01-01から1年間の記事一覧

懐かしさはいつも未来の方を向いている

2011/12/21 GFsへ 堀江敏幸『なずな』を読み終った。「なにごとも起こるな」と祈りつつ読みついでいった。この小説家ならその願いをかなえてくれる、という信頼感があった。だから本に向かっている間だけは安心して、心を完全に開いておくことができた。…

アメリカ謀略説について

2011/12/18 GFsへ 前回の別件に、(たぶん)若造の新聞記者に文句をつけたあとが、どうも気になって仕方がないから、考えてみる。「日米開戦アメリカ謀略説」についてです。書呆子に加わってもらったら華やかになるだろうけど、今日はひとりでボツボツと…

ダチカンぞいね

2011/12/16GFsへ 1941年当時 加藤道夫 1918(T7)────23歳──1953(35歳) 堀田善衛 1918(T7)────23歳────────────1998(80歳) 中村真一郎1918(T7)────23歳────────────1997(79歳) 福永武彦 1918(T7)────23歳────────1979(61歳) 加藤周一 1…

純粋を目指していけば白紙に近づく

2011/12/15 GFsへ 昨日で2学期の自分の授業が終わった。とびとびだったとは言え、約4ヶ月。毎回片道2時間かけて通いつづけたわけで、これから一ヶ月冬籠もりができると思うと、やっぱりほっとする。今日は畑にも行かず、家でごろごろして過ごす。 なにし…

『若き日の詩人たちの肖像』

GFsへ 2011/12/13 年末旅行が近づいてきて、「さて、去年はどこに行ったのかな?」と思い出そうとしてぎょっとなった。最初はまったく何も出てこない。数日経って、「花の家」で落ち合って、翌朝は自転車を借りて渡月橋を渡り、なんとかいう神社に二カ所…

『旗手たち』との別れ

2011/12/9 GFsへ 今年いちばんの冷え込み。朝のサンポのとき、チビたちも震え上がってしまった。といってもまだプラスなんだけど。 矢代静一は、「自分たちの青春を次の世代の人たちに知ってもらいたい」という動機でこの本を執筆したと書いている。その…

『旗手たちの青春』ノート

GFsへ 2011/12/08 朝5時40分起床。6時30分出勤。外はまだ夜。乗り込むのは地下鉄なので、太陽を意識するのは、博多駅から篠栗行きの列車に乗り換えてからになる。こんな通勤が来月中は続くのだろう。 先週ジロドウの『オンディーヌ』。今週は矢代静一『旗手…

矢代静一『旗手たちの青春』

GFsへ なにやら読書ノートみたいなことになってきたけれど、成り行き任せでいこう。 どうも暗合めいたことがつづく。 矢代静一に言わせると、「『なよたけ』以上の傑作」である加藤道夫の『挿話(エピソード)』(自分にはなんのことやら、読んでいてもイ…

楽しみもて汝の酒をのめ

GFsへ 2011/12/03空しいことの空しさ、とコヘレットはいう。 空しいことの空しさ、すべては空しい。 この世の労苦から、人はどんな利益を受けるのだろう。 一代が去り、また一代がくる。しかし、地は永遠に変わらない。 日は昇り、日は沈み、そして、また…

倍賞智恵子・奈良岡朋子

GFsへ 2011/12/02 昨日は朝から熱がでて、午前中は布団の中、午後もごろごろして過ごした。オンディーヌにやられて現実に戻りきれず、ふわふわしていたから、ちょうど良かったのかもしれない。 布団のなかでスカパー!の番組表12月号をめくっていたら、か…

還暦すぎて『オンディーヌ』

GFsへ 2011/11/30 何でそういうことになったのかは、もう忘れたが、今週『オンディーヌ』を読んだ。(光文社 古典新訳文庫 仁木麻里訳)読んでいて心がふるえた。ふるえすぎて、現実にうまく対応できなくなっていた。胸が痛くなった。胸が痛くなって食欲…

比ガ里荘便り2011/11/26

GFsへ ピッピ9歳、ガロの6歳の誕生日を山小屋で迎えた。ガロの誕生日はほんとうは来週だが、「なんでもふたりいっしょ」。チクゴタロイモ(新しい自称)の兄弟がみな8月生まれだったので、誕生祝いの牛肉入りカレーライスは1回にまとめられていたのと同じ…

仏を感知したかったらチャペルに行け

2011/11/24GFsへ 23日の祝日に、ホテル日航の結婚式用のチャペルで、オルガンの演奏会があるというのでいってきた。不思議な経験だった。 まず、音が後ろから聞こえてくる。前方にあるのは空間と十字架。聴衆は40人とはいない。ほとんど、まばらと形容したい…

堀田善衛『城館の人』読書ノート(3)

2011/11/23GFsへ 旭川からのメールでは、はやくも積雪20㎝とか。北国ではあっという間に季節が進んでいく。それに比べて、わが福岡での季節の移ろいののろいこと、のろいこと。でも、その福岡からさらに1000㎞南に石垣島がある。その南北の長さにこそ、こ…

中谷美紀『猟銃』

2011/11/20 IS氏へ 今朝は、今週はじめてチビたちといっしょに起き出しました。なにしろ、仕事の日は暗いうちに出掛けますし、仕事のない日は9時ちかくまで寝ていますから、今週は毎朝カミさんがチビたちの面倒をみていました。 一足先に玄関からでておし…

はにかみの国のままで

GFsへ2011/11/19 今週で、来週木曜日からの試験範囲を終えた。なんだかほっとしている。なにしろ範囲が多くて、得意の横道に逸れる暇もない。 現代文は、最後のまとめとして「孤蓬(ほんとうはたけかんむり)庵忘筌」の説明を以下のように黒板に大きく書…

『城館の人』読書ノート(3)

GFsへ 2011/11/17──ほんとうに偉い人は結論を出していない。 先週、「断言することだけが思想家の任務なのではない。〈未決のまま〉にして、それを胸中に置いたまま生きることのほうが、はるかに勇気を要する。」という堀田善衛の言葉を引用したあと思い…

世界不況への備えとしてのTPP

2011/11/13RCへ ひさしぶりかな? 水曜日に仕事を終えて、飯塚に帰った。 木曜日は、母親の心電図をとる日。グループ・ホームと契約をしている看護婦さんが待っていてくれた。この人がグループ・ホームから受け取る収入は、月に4,500円。もう天使のような…

大阪芸大の卒業生たち

2011/11/10 GFsへ 先週、福岡市の国語教員たちでお伊勢参り。今年は、皇學館大学の先生が案内役をしてくれた。その先生たちや企画してくれた部会の事務局の人たちに感謝。ただ、その人たちと自分とは、一世代違うんだなと気づいて、ちょっとショックだっ…

一種抽象的な技術者

堀田善衛『城館の人』読書ノート(2) 2011/11/7 堀田善衛は十代のモンテーニュが学んだであろう、16世紀前半の(のちにコレージュ・ド・フランスと呼ばれることになる)学校の、ラテン語やギリシャ語以外の課業を列記している。面白いから全部書き写す。(…

技術と判断力

GFsへ 2011/11/03 旭川から来た千葉大生に会ったのは、もう40年以上まえ。工学部だと言うので、何を勉強しているのかと訊くと、流体力学だと言う。 ──そんなもの、高い所から低いほうに流れるに決まってるじゃないか? とても、それが学問だとは思えなか…

申徒嘉兀者也

『荘子』内篇 第五徳充符篇二 2011/11/02 申徒嘉は兀者(ごつしゃ=足きりの刑を受けた不具者)なり。しかして鄭の子産とおなじく伯昏無人を師とす。 子産、申徒嘉に謂ひて曰く、 「我、先に出づれば則ち、子、止まれ。子、先に出れば則ち、我、止まらんと。…

不立文字の精神

2011/10/30 GFsへ 前田利鎌『臨済・荘子』を読み終わった。そんなつもりでなく列車のなかで読んでいたので、急に終わったときは、なんだかボカっとつっかい棒をはずされたような感じになった。 中身はやたらと難しそうだった。(数式が出てくる文章とおなじ…

糸島旅情

GFsへ2011/10/27(木) 福岡もけっこう冷えてきた。チビたちの散歩の時、この秋はじめて長袖の上着をはおっていった。そろそろ冬支度をはじめよう。絶滅危惧種はもうセーターを着込んでいる。灯油も買ってきたそうだ。 夕方の散歩は今津湾半周。海からの…

思い出作り

GFsへ2011/10/23 わがやの精霊の体重が、とうとう4㎏を割ってしまった。最盛期が5,3㎏だったんだから、ほぼ4分の3になったことになる。親に当てはめてみると45㎏くらいに減ったのといっしょだから、もうリミットを切っている。 ただし、数日前、主治医に…

母上の誕生日

2011/10/20GFsへ 本日は皇后陛下77歳の誕生日。ということは、わが母上95回目の誕生日。皇后はまだまだ。 よくここまで来たなという感慨には相当のものがある。必ずしも体のことではない。よくぞ穏やかな老人になってくれた。 いい家の箱入り娘として育て…

百合子さんのこと

2011/10/16GFへ 庭の十月桜が終わった。今年は「見においで」と言いたいくらいの盛況だった。あとは、来年の春まで、思い出したようにちらほら咲く。 十月桜が終わったら、生垣のサザンカにはつぼみがびっしり出来ている。今度は、リィーの遺影の前がはな…

純粋な現実

混沌という真について 2011.10.14GFsへ 白黒テレビ時代の『ベン・ケーシー』で、待合室で順番を待っている初老の患者が言った「男は自動巻腕時計といっしょだ。体を動かさなくなると、中身までおかしくなる。」というセリフの話は前にもした。 昨年の12月…

限界集落便り

GFsへ 2011/10/10 飯塚の向かいの家のおばちゃんが亡くなった。88歳だった。幼なじみの3兄弟にとっては育ての親だった。 連絡が入ったとき、まだ小学校のころに亡くなった最初のおばちゃんの顔がわっと出てきたが、すぐにあとのおばちゃんの顔にかわった…

白川静『孔子伝』抜き書き(3)

白川静『孔子伝』抜き書き(3)2011/10/06●古代において楽師はその殆どが瞽史であった。瞽史は音楽の伝承者であるのみならず、文学の伝承者でもあった。 ●孔子も「われ少きとき賤しかりき」と述懐したが、墨子にいあっては、氏素性もなき徒隷の出身であった…