國分功一郎 『中動態の世界』を読み終えて、言葉が出なくなった事情を少しだけ書きます。 「自由を追求することは自由意志を認めることではない。中動態を論ずるなかでわれわれは何度も自由意志あるいは意志の存在について否定的な見解を述べてきた。もしか…

五つの物語 ＜１＞ あると 体がすっと持ち上げられた。 これまで経験したことのない高さになったが、ちっとも怖くなかった。 あたかい胸に抱かれて喜びでいっぱいになったとき、 彼女は母親のことも兄弟のことも、すべて忘れていた。 少年は子犬をあるとと名…

高校一年生のための 一気読み日本文学史 福岡編 <一> 最初に、文学とはなにか、の話をしておきたい。 文学は、物語や戯曲(ぎきよく)（お芝居の台本）や随筆や詩や歌だけを指すのではない。人々の心に残る言葉の総体を文学と呼ぶ。 たとえばフランスには、亡…

今西錦司『生物の世界』 ※「生体と物体」とか「空間と時間」のような二項分立では、この世界を語ることはできない、ことの 説明の部分。 「空間的即時間的であるということがこの世界の構成原理である以上、その存在が構造的即機能的でなければならないのは…

スピノザ＜触発の思考＞ 浅野俊哉序 スピノザの思考の根幹にあるのは、たとえば「無媒介性」（あるいは弁証法／目的論の拒否）、「外部なき思考」（あるいは内在性）、「力」（あるいは力能／能力）、そして「触発」（変様）といった概念――これらはどれも一…