2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

安田與重郎文庫(4)抜き書き―終―

『近世の発想について』補遺 詩人が心をこめて云ふことばは、一つないし多数のことやものの結果ではなく、つねに原因である。――もっと丁重に云へば、過去の結果の全部または一部をうちに蔵め、しかも全然別な明日の原因となるものである。GFへ 保田与重郎…

スピネットでグールドを

また学生時代の話になるが、最初に稼いだ金で中古のラジカセを買った。スピーカーは一つしかないけれど、ヘッドフォンだとステレオで聴けるというスグレモノで、ずうっと宝物にしていた。 そのラジオから、「××の自動ピアノの演奏が発見されたので」と、ベー…

安田與重郎文庫4抜き書き―3―

蕪村の位置 ・「春の暮れ家路に遠き人ばかり」と歌った蕪村の、心の祈り中の中には、悲哀と倦怠と浪漫と、さらに色情と、さういふ漠然とした詩人の家郷を失っ嘆きが悩ましいまでに描かれてゐる。 ・わが文藝の伝統は芭蕉の慟哭ののちに、蕪村の転変があった…

ヤング@ハート

GFへ またもやたまたまだが、『ヤング@ハート』という映画をみた。 『ブルース・ブラザーズ』、『今宵フィッツジェラルド劇場で』につづいて、これでわが遍歴が完結してしまったような気分になっている。2007年の作品だから、もうレンタルビデオ屋にいっ…

「日本人っぽさ」について

GFへ 今年のお盆もウロウロしているうちに終わった。おかげで楽しみにしていた下関美術館と佐世保ちかくの小さな都会へは行かずじまい。(佐世保のほうはまだ狙っているけど。そうだ、相浦町だ。)二カ所の墓参りと大塚先生の初盆、それに昨年からは老人ホ…

保田与重郎ぬき書き―2―

保田与重郎ぬき書き―2―近世の唯美主義 ・芭蕉の深刻な偉大さや秋成の峻烈な精神よりも、私には蕪村のあの大様の春の絵巻風の世界のもつ永遠ののどかさと、永劫の郷愁、あるいは無限の叙情の悲哀と雄大な絢爛、さういふ混淆の中に、大洋の感情を思はせるやう…

洲うた―1―

GFへ ずいぶん前から、ぐちゃぐちゃ言っている戯曲だか小説だか雑文だか訳の分からないものの題名が決まったので、ともかく報告します。 『洲(しま)うた』 題名だけはなかなか高尚になった。「しま」は「島」でもあるが、もともとの日本語の「しま」は、あ…

内田樹講演要旨

福岡市国語部会の会報誌2010号に昨年の内田樹講演の全文が載っていた。が、「はて、こんな内容だったのか」と感じた。たぶん、先住民の息子は例によって、聞きたいことだけを聞いたのだろう。 で、自分が聞いたことと、聞きながら考えたことをここに残してお…

北大津高校野球部

GFへ 迷うな。ひるむな。一歩もひくな。 残念ながら、わが夢の高校、嘉穂の校訓ではない。北大津高校野球部の合言葉らしい。彼らは「覚悟の野球」を追求していて、毎日、「4つの覚悟」を斉唱するのだという。そんな学校、あんな目をした高校生がいるのなら、…

「階層社会」について

GFへ 例によって、思い出話から。 10数年前、日本語を学んでいるオーストラリアの大学生と話したことがある。日本人がすでに喪って久しい謙虚さを感じさせる若者で気持ちがよかった。「自分の学校の生徒は勉強しなくて困る。」というと、「大学の先生から…

保田与重郎『後鳥羽院』抜き書き―1―

「日本文芸の伝統を愛しむ」 ・もののあはれといふ歌のみちは、男と女との間のはしをうたふことであった。 ・家持から王朝の美女の文学が発生する素地がきづかれた。後宮を中心とした機智の文学は、家持のサロンに於いて早くきづかれてゐた。のみならず、こ…