2016-01-01から1年間の記事一覧

Tへ

Tへ。 今朝の新聞のコラムを読んでいて、「?」だったので追伸です。 昨年、「中高生新聞」が全国の教員からアンケートをとったところ、生徒に薦める本の第一位が『こころ』だったというのです。 わたしは違和感がぷんぷん。 そう投票した教員たちは、まと…

「一反田」以後〈Ⅱ〉

タカ女(じよ)とキビョウエ 北の国にタカという美しい娘がいた。 母を早くに亡くしたので、タカは父と弟のためにかいがいしく働いていた。 タカの家は武家(ぶけ)だった。 父と弟は戦場にいることが多かった。 戦場から戻ってくると、弟は姉に甘えてばかりいた…

「一反田」以後〈Ⅰ〉

ラン 体がすっと持ち上げられた。 これまで経験したことのない高さになったが、ちっとも怖くなかった。 あたかい胸に抱かれて喜びでいっぱいになったとき、 彼女は母親のことも兄弟のことも、すべて忘れていた。 少年は子犬をランと名づけた。 「ラン」 そう…

油山不定期通信〈7〉

あ ぶ ら や ま 不 定 期 通 信 7 2016/10/25 先日、福岡出身の大隅良典さんがノーベル賞を受賞したというニュースを見て、「高校はどこだ?」。福岡高校の出身だった。「修猷館は悔しがっているだろうなぁ。」でも、修猷館からは平和賞ぐらいしか出そのうに…

油山不 定 期 通 信〈6〉

あ ぶ ら や ま 不 定 期 通 信 6 2016/10/10 一学期の終わりに、植物の在来種と外来種の違いに触れたので、今回はその続きから始めます。 その植物が在来種か外来種かを考えるとき、わたしはまず、「すみれ」は在来種、「コスモス」は外来種、という具合に…

ペリリュー・沖縄戦記

GFへ 敷地外に設置されている喫煙所で校長と一緒になった。 口をきくのは三度目。 一度目は歓迎会の時。二度目は野球公式戦のスタンドで。「私は生徒たちに自信をつけさせたいのです。」 ──我々は、四年間遊びながら、少しずつ社会人になる覚悟をきめて行き…

あぶらやま通信〈5〉

あ ぶ ら や ま 不 定 期 通 信 5 2016/09/05 わが母親は現在99歳。生まれ故郷にあるグループ・ホームで穏やかに暮らしていらっしゃる。 もう言葉は出て来ないが、こちらの言うことはほとんど分かっている。数ヶ月前だが、母親のベッドの脇でスタッフとお喋…

ピースメイカーズ・ノート

雲雀よ!〈番外編〉マーガレット・マクミラン『ピースメイカーズ』上巻 読書ノート フランスの18 〜30歳男性のうち約四分の一が死に、約半数の負傷者を出した第一次大戦のあと、(ベルサイユ)講和会議の三巨頭は、それぞれ自国に何かをもたらそうとしていた…

おけさおけさで夜が明ける

mfへ 月がわびしい路地裏の 屋台の酒のほろ苦さ 知らぬ同士が小皿たたいてチャンチキおけさ おけさ切なや やるせなや 今月の元気カフェで、お婆ちゃんたちが手拍子をとりながら歌うために『チャンチキおけさ』を提案した。作戦は大成功で、歌い終わったあと…

T様

T様 遠雷が聞こえてきます。 「はやく一雨こい?」 子どもの頃からの習慣で、夏に窓を閉め切るのが苦手です。ということはエアコンが苦手ということになります。梅雨明け以来、わずかな風が入ってくるのを頼みに暑さを凌いで参りました。 『一反田』発行につ…

シュレジンガーと山川健次郎

MFへ 長くなりそうなので、入力します。このほうが書くより早い。(それに訂正を加えやすい) 友人の言った会津の話は本当だと思う。 白虎隊の美しく悲しい話だけではなく、会津戦争は実に凄惨なものだったらしい。どちらが先かは知らないが、味方の死体か…

雲雀よ! 〈9〉

雲雀よ! 〈9〉 「荒木先生のバカ」 一年○組○番 ×××× ぼくは、荒木先生はバカだと思う。 なぜなら、先生がしている昔話を聞いていると、けっこう頭が悪かったということが分かったからだ。そして、なかなか教えるのがへたくて、分かりづらいからだ。 なので…

雲雀よ!〈6〉〈7〉〈8〉

雲雀よ!〈6〉 一足はやい週末。快晴の午前中、いつものようにコンビニに行って百円コーヒーを買い、こぼさないように気をつけながら数十メートル持ち歩いてベンチに座り、今津湾を一望しながら「ふう。」至福のとき。 その途中、街路樹のツツジのなかを覗…

あぶらやま不定期通信〈4〉

あ ぶ ら や ま 不 定 期 通 信 4 2016/07/05 60を過ぎてから「歯は大事だなぁ。」と実感するようになった。 君たちにはまだ分からないかも知れないけれど、私たちは舌でだけ味わっているのではない。じつは歯でも味わっているのです。歯の調子の悪いときの…

あぶらやま不定期通信〈3〉

あ ぶ ら や ま 不 定 期 通 信 3 2016/06/09 前回『ドラえもん』を引用してて思い出したことから始めます。(実はあとひとつ理由があるんだけど、それは、おいおい分かる) 小松左京(1931〜2011)というSF作家がいた。『復活の日』『日本沈没』はベストセ…

あぶらやま不定期通信〈2〉

あぶらやま 不定期通信〈2〉 2016/05/26 朝起き出したら、まずはインスタントコーヒーをマグカップいっぱいに作って玄関先のベンチに座り、新聞を読む。ホークスが勝った翌朝は丁寧(テイネイ)に読み直す。負けた翌朝は郵便受けから取り出す気にもならない…

あぶらやま 不定期 通 信〈1〉

あぶらやま 不定期 通 信 2016/04/25 これから一年間、国語の勉強をしていきますが、ときどき思いつくままに、こんなものを発行します。気まぐれなものだから気楽に読んでくれたら嬉しい。 第一回目は4月22日に書き始めました。犬の散歩を終えると玄関先…

雲雀よ!〈5〉

雲雀よ!〈5〉 先日NHK『新日本風土記』かなにかの再放送で、越中八尾の風の盆を見た。いや、その現場に立ち会っているみたいだった。「行きたい。でも行けない。」 ポルトガルのアルファマに行ったとき須田画伯が口走った「ワッチはここで死にます」は…

雲雀よ〈3〉〈4〉

雲雀よ!〈3〉 卒業式以来の自宅療養でどうにか頭も心も軽くなってきた。一年間の蓄積疲労と先月の心労とがこたえたようにも感じるが、五年ぶりにウツがぶり返してきている感覚もある。そう思っただけで憂鬱だ。…………また、ひきこもりになるのか。…………若い頃…

石原吉郎 麦

いくら読んでも偏差値は上がりそうにない国語プリント今月の詩 2016年3月 新聞のちいさな記事に(新聞とネットのいちばんの違いは、新聞は自分にとってはどうでもいい情報だらけなので、自分の知りたいことを探さねばならないこと。生きていくうえではこの…

雲雀よ!〈1〉〈2〉

雲雀よ!〈1〉 最高気温がマイナス3度の福岡なんて想像できなかったが、現実になったみるとけっこう面白かった。 学校についたら「あーら先生、いま休校と決まりました。」 せっかく出てきたから午前中は学校で遊ぶと決めて、一室にストーブを二つつけて授…

17才

いくら読んでも偏差値は上がりそうにない国語プリント今月の詩 2016年2月 「ずっと18歳になるのを待っていた。」大坂なおみ。 ──初のグランドスラム全豪オープンテニスで3回戦に進出。予選から数えて6試合目で元チャンピオンに完敗した。── 「夕焼け小焼け…

洲うた 補遺

洲うた 補遺 どうしようか(書くか書かないか)と気になっていたことを二つ付け加える。 「白馬(あをうま)は交尾を経験していない成体馬」のことだという説明に、「そういう見方もあるのか」とは思っても、「でもそれは青馬の説明にはなっても白馬の説明に…

洲うた〈9〉

〈洲うた〉9 終章は頭も胴体もない尻切れトンボの脚本になる。 時は昭和二十一年はじめ。 引き揚げ船のなかで知り合った男から「好きなだけ居ていい。酒だけはいくらでもある。」と言われて、酒を飲むこと以外に何もしていなかった所に幼なじみの同級生から…

今月の詩 2016/01

いくら読んでも偏差値は上がりそうにない学習プリント 今月の詩 2016年1月 新年おめでとうございます。 また新しい年がやってきた。 君たち若者にとっては、あるいは「それなん?」かも知れないけれど、68年目の新年は、それだけで感動的なものがある。(感…

洲うた 7・8

洲うた〈7〉 劇中劇の抜粋は終わったのだが、まだ本体の構想が出来上がらないので、一、二回まわり道をする。いわば幕間講談です。 グループホームで不思議な夜を過ごして戻ってくると、テレビで明大卒の男の第2回目の一筆書き山行があっていた。去年利尻…

洲うた 5・6

洲うた〈5〉 これはもともと戯曲として構想していた。が、どう頭をひねっても舞台劇にもラジオドラマにもならない、ということを家族に話したら、「なら、映画にすればいいやん。」そうか、とプランを練り直したが、やはりひとつの形にする能力はいつまで経…