今月の詩 2016/01

いくら読んでも偏差値は上がりそうにない学習プリント
 
今月の詩                    2016年1月

 新年おめでとうございます。
 また新しい年がやってきた。
 君たち若者にとっては、あるいは「それなん?」かも知れないけれど、68年目の新年は、それだけで感動的なものがある。(感動の回数は多いほうが儲け。君たちもぜひ長生きしなさい)

 お正月の新聞の小さなコラムに下のような文章があった。君たちへのエール代わりにまずそれを書き写します。
┌───────────────────────────┐
ラクダが砂漠に棲めて、キリンが棲めないのはなぜだろう。│
│ 〈背が高すぎるからです〉と登場人物が語る。 │
デンマークの推理作家ユッシ・エーズラ・オールスンの人気シ│
│ リーズ『特捜部Q』の最新刊『吊された少女』の一場面であ │
│ る。〈キリンの場合、見渡すかぎりここには砂しかないと悟って│
│ います。幸運にもラクダにはそれがわかりません〉。 │
│ すぐ先にオアシスがあるかもしれないと期待しながら進めるの│
│ だ、と。 │
└───────────────────────────┘
 卒業生から家族の写真付き年賀状をもらうのが楽しみ。
 三人のパパになった証拠写真付き年賀状には「新入社員の教育係になっちゃいましたオレがですよ。(笑)。先生に会っていっぱい話がしたいです。」
 さぁて、どんな話になるのやら。
 年末に挨拶に来た卒業生は「31日に世話をしているボーイスカウトを連れて背振にご来光を拝みにいきます。一年かけてキャンプのやり方を練習させました。」一年前は吹雪になって大変だったらしいが、今年(?)はいいキャンプが出来たみたいだ。彼のFacebookに美しい写真が載っていた。

 西陵の先生たち同様に、まともに正月休みもないような状態で働いていた頃、ある生徒が「オレは社会の歯車なんかになりたくない」と書いているので「?」。次の時間教室に行って、知らんぷりをして話した。
「私はこの学校の歯車になろうと思って働いている。もちろん錆び付いたらすぐに新品と取り替えられる。(私学でした)でも今も順調に回っている(つもり)。私という歯車のおかげでこの学校が、いや、もっとデッカくいうとこの社会が円滑に動いているということに誇りを持っている。この社会は私のような歯車が何千万も黙って動いているんだと思うよ。」
 去年、ビルを支える杭打ちをいい加減にしたためにマンションが傾いたというニュースを聞いてびっくりした。一番下で0.1ミリずれていたら100メートルの高層ビルだと何センチ狂うのだろう? そんな、中学校の「図形」で勉強したはずのことを無視して、仕事をしたふりをして給料を受け取っていた人たちには「歯車としての誇り」がなかった。それは、そのマンションに住んでいた人たちより百万倍も不幸なことだった。(どうして自分から自分を不幸にするんだろう?)
 この学校には「誇りをもった歯車先生」がたくさんいらっしゃる。国語歯車、ラグビー歯車、ソフトテニス歯車、生活指導歯車、進路指導歯車、、、。その先生たちとほんのちょぴりだけど力を合わせられる喜びは何ものにも代えがたい。「冬休みにたっぷり油をさした。今年も回るぞ!!」

 冬休み入りしてすぐ、友人たちと、「岡山→鳥取→福井→京都→神戸」の旅行をした。岡山の後楽園、若狭の寺、京都の渡月橋天竜寺、神戸でのジョルジョ・モランディ。どれも忘れがたい。
 先月かってに約束をしたから、そのとき出会った観音様などの写真を下に載せます。
 旅行中に、「28日アクロスで西陵生たちが第九を歌う」というメールが届いていたので久しぶりに天神に出かけた。受け取ったパンフレットを見ると、ソロのなかのひとりは老教師の高校の26期後輩だった。彼女は4人の中でただひとり略歴に卒業高校名を加えていた。「アイデンティティー」ってのはそういうことなのです。
 君たちの中からも、FUMIKAさんだけでなく、「西陵卒」と堂々と公言する者がたくさん出てきてほしい。
 高校生たちの第九は良すぎた。(「また今年も更新できた。」)参加した諸君と、教えてくれた先生に「ありがとうございました。」──声が出るうちに一度だけ「西区の第九を歌う会」に参加させてもらおうかな。──

 今月の詩は、シラー(1759〜1805独)の詩がもとになっている第九の合唱部分を紹介します。高校二年のとき社会科の先生が黒板いっぱいにカタカナを書いて、授業中強制的に歌わせたのは、もう50年前のことなんだな。

      歓喜の歌      岩田倫和訳

おお、友よ! このような調べではない!
そんな調べより、もっと心地よく歌い始めよう、喜びに満ちて。

歓喜よ、美しき神々の煌(きら)めきよ、
エリジウム(楽土)から来た娘よ、
我等は炎のような情熱に酔って
天空の彼方、貴方の聖地に踏み入る!

貴方の御力により、時の流れで容赦なく分け隔たれたものは、再び一つとなる。
全ての人々は貴方の柔らかな翼のもとで兄弟になる。*

一人の友人を得るという大きな賭けに成功した者よ、
一人の優しい妻を努めて得た者よ、
その歓びの声を一つに混ぜよ!

そう、この地球上でただ1人の(一つの心と呼ばれる)者も!
そして、それが出来なかった者は、この集まりから涙を流してひっそりと去る。

全ての生物は、自然の乳房より歓喜を飲む。
そして、善きもの、悪しきものも全て薔薇〔ばら〕色の跡を付けていく。

歓喜は我等に口づけと葡萄〔ぶどう〕、
そして死の試練にある一人の友を与えた。
官能的な快楽は虫けらに与えられ、
そしてケルブ(智天使)は神の御前に立つ!*

喜ばしきかな、太陽が壮大なる天の計画に従って飛ぶが如く、
兄弟達が己〔おの〕が道を駆け抜ける、勝利に向かう英雄のように喜ばしく。*

抱〔いだ〕かれよ、数多〔あまた〕の者よ!
この口づけを全世界へ!
兄弟達よ!星空の彼方に
愛する父(なる神)がおられるはずだ。
地にひれ伏さぬのか? 数多の者よ。
創造主(の存在)を感じるか? 世界よ。
星空の彼方に求めよ!
星々の彼方に彼の御方(神)がおられるはずだ。