2014-01-01から1年間の記事一覧

読むワクチン〈1〉

読むワクチン これからを生きる高校生のための短編集〈Ⅰ〉目次 人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ・・R・フルガム 草之丞の話 江國香織 胡桃割り 永井龍男 父 芥川龍之介 父母のこと 藤原新也 よだかの星 宮沢賢治 驟雨(はしりあめ) 藤沢周平 Ⅱ…

mへ

mへ。 昨日はグループホームのバスハイク。帰りに「あと三十分遅く帰ってくること」という連絡が入って理由がわかった。 建物内部を清掃し、床にはワックスがけをしたんだ。「ええ、私たちは追いだされていたんです。」もとは長距離トラックの運転手だった…

立原道造

今月の詩 2014年11月国語教師のつぶやき 若い頃アメリカに留学して、むこうで出会った女性と結婚し、結局そのまま60歳までアメリカで暮らした人と知り合ったことがある。アメリカにわたる前からキリスト教に改宗していたそうだ。 その人の息子のいちばんの友…

『水準器』のあとがきに代えて

『水準器』のあとがきに代えて 一筆がきでは済まないことをわたしたちはコトバで考えつづけているわけではけっしてない。 コトバで考えているつもりのことは、ほとんどただ自分への説明や説得だ。火野葦平は「ことばは灰だ」と言う。 実質は燃えつきたものの…

宇宙というバロック

物質とは力のかたまりのコトだ。運動会後やっと授業がスムーズになってきた。 きのうだったか、「さあ、あいさつをしよう」と声をかけると最前列の生徒が突然、「 ア フロッグ ジャンプト イン トゥ ジ エインシャン ポンド、アフター ザ サイレンス。」ーー…

安西冬衛

今月の詩 2014年9月 「鶏が先か卵が先か?」という話がある。 卵は鶏が産む。鶏は卵から産まれる。 じゃ、この世界に最初に現れたのは卵か?鶏か?「鶏が先か卵が先か?」 それと同じような話で、「タンパク質が先か遺伝子が先か」と、これまで皆が頭を悩ま…

われわれは「絶対矛盾の自己同一」そのものだ。

みなみな様へ 2014/08/26 4歳の女の子からナンパされてしまった。 この夏休みの総括をしようと思うのだが、なにから話せばいいのかわからないので、その話あたりからはじめる。 3週間ほどまえ、家族4人で山小屋に行った帰り、基山サービスエリアでトイレ…

中沢弘基 生命の起源

2014/08/08GFへ また台風が近づいている。こんどのは相当に大きい。 コースは太平洋を北上したあと四国から中国地方を横断して日本海に抜けるという。20数年前怖ろしい台風を経験したことのある者として、進路上のことが気になる。 よく雨が降る。 いまの…

水準器

水準器 夜よねむれ 夜よねむれ 思い出はとっくに消えようとしている 喪われるものたちの記憶をひきとめてはいけない 天候の推移にも昼夜の交代にもかかわらず いつも世界は光りにあふれていたのだから 小さい者たちへの呼びかけにみちて明日というものをどう…

吉野弘

今月の詩 2014年8月 A frog jumped into an ancient pond, after the silence. 哲学、科学、とつづけたので、今月は文学。 授業で話しかけたことの続きです。 注意深い者は上の英詩を読んで、「?」と感じたはずだが、そのことはわざとじらして後回しにしよ…

谷川俊太郎

今月の詩 2014,7 先月はいわば哲学史の話をしたので、今月は科学史の話をします。 コロンブスが北米に到達したのが1492年。ヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を開拓したのが1498年。マゼランの船団が世界一周の快挙をなしとげたのが1522年。日本でいうと戦国…

加治木剛

今月の詩 2014/06 例によって、思い出話からはじめます。 題名も作者も忘れましたが、中学生のとき読んでいた本の中で、何ごとかをなそうとするのを躊躇(ちゆうちよ)する仲間にむかって、ある登場人物が「僕たちはコペルニクスを生んだポーランド人なんだぞ…

岡崎久彦1999

アジアにも半世紀の平和を ─二十一世紀に向けての日本の国家戦略─ 岡崎久彦 一九八九年にベルリンの壁が崩れてから十年になる。そして年が明ければ西暦二〇〇〇年代の世界に入っていく。 ここではまず、日本がどのように冷戦終了後十年間の変動を生き延びた…

今月の詩 室生犀星・河合酔銘

今月の詩 2014年4月 また春がきた。これから約一年間、現代文を勉強してゆく。 高校の勉強の大半は受験勉強だ。しかし、国語のほんとうの勉強はもっともっと幅広く奥深い。そこで、これから月に一度、こういうものをプリントにして渡すことにする。 こ…

大人になろうと思う高校生のための評論集

大人になろうと思う高校生のための評論集 目 次大人になるまでの暗い道 中沢けい・・・・・4 子に厳しい親の哀しみ 野見山暁治・・・・5 若者の法則 香山リカ・・・・・7 触ることの不思議 大井 玄・・・・・9 詩と映画 清岡卓行・・・・11 手を見つめ…

斎藤史歌集抄録

抄録 齋藤史歌集 魚歌 昭和十五年三十一才 「魚歌」以前 昭和六年 二十二歳草木らはおだやかに眠る夜を窓にわれはあかりを燃やさねばならぬ 昭和七年 二十三歳白い手紙が届いて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たうさびしさを人にうつさぬ善行を持ち堪…

西村蓬頭

雑談 父親は冗談のことをゾウタンと呼んでいた。あれはひょっとしたら「雑談」だったのかもしれない。あの「ゾウタンのごつ!」をもう一度聞いてみたいな。 高橋治『含羞』 侘助に狂いはじめたら、もうとめどがない。 私の年齢まで生きると、日本の女どもの…

二十世紀の俳句(一)

私家版 二十世紀の俳句(一) 2014/03/06 用のなき雪のたヾ降る余寒(よかん)かな 新米や塩打つて焼く魚の味 井上井月 埋火や何を願ひの独りごと 一八二二?〜一八八七? 病床やおもちゃ併べて冬籠り 正岡子規 一八六七〜一九〇二 かすみ草やさしき嘘に人畢る…

私家版 井月抄

私家版 井 月 抄 岩波文庫『井月句集』からの抜粋 原本は歳時記構成になっている。 春用のなき雪のたヾ降る余寒かな定まらぬ空に気のせく弥生かな春風や碁盤の上の置き手紙春雨や心のまゝのひぢ枕手がはりに持つ家づとや春の月淡雪や橋の袂(たもと)の瀬田の…

仏教では終局にリセットが用意されている

2014/02/07 北川透さんから『KYO』が送られてきた。内容もさることながら「読まれることを期待していない─ひとり雑誌─」なんて最高の贅沢だ。その贅沢につき合わせていただくことにした。読み終わったらその都度、いまの学校の国語科準備室の本棚に置きみや…

「存在」は存在し得ない?

2014/01/05 年末、信州から「自分の有限性を自覚した人間だけが未来を獲得する」についての返信メールが届いていたのに、年が明けてから気づいた。 もともと上のことばは、ハイデガーのことばを著者が翻案したものをさらに生徒用にGG語訳したんだが、それ…