『座頭市』第1作

GFへ
 映画の話をしたついでに、あと一本の大好きな映画を付け加える。
 『座頭市』の第1作目だ。
 市はある町で、厄介になる。世話を焼いてくれる方の所望で居合い切りを実演する。見ていた者たちは、なにか異様なものを見るような目つきで市をみる。
 目の不自由な市に気をつかってくれる心優しい娘がいた。(たしか坪内ミキ)自分の手を優しく引いてくれる娘に市も心をゆるすようになった。そんな時、娘が与太者たちに取り囲まれる。市は娘をかばい、一瞬のうちに与太者たちを切り捨てる。それを凍り付くように見ていた娘は、悲鳴をあげて逃げていく。
 市はまたひとりで旅に出る。
 子母澤寛の原作はこれ一つで、続編はみな映画台本の創作なのだそうだ。

 似たようなイメージの日活映画があった。
 『人斬り××』というような題名じゃなかったろうか。
 主演は渡哲也だったか、高橋○○だったか。
 人斬り××は、一宿一飯の恩義から、会ったこともない男を殺さねばならなくなる。(相手は池辺良だったようい記憶しているが、さて)その匕首による死闘は延々とつづき、小さなどぶ川でやっと決着がつく。生き残った××は土手を這い上っていく。と、そこは女子校のグラウンドだった。楽しく運動をしていたブルマー姿の少女たちは、血みどろ、どぶどろになった××をみて、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
グラウンドで大の字になった××とその周りから駆け去っていく少女たちを空中から俯瞰した映像。
 エンドマーク。

別件
 江上剛『我、弁明せず』(PHP)に寄り道した。団琢磨暗殺後の三井財閥を率いた池田成彬(せいひん)の評伝だが、今日の話は別。
 その本のなかに、二・二六事件のあった昭和11年当時の女の子の値段の平均が出てくる。売られた子女約5万人の身売りされるときの値段であるが、それが、親の受け取った金額か、買うのにかかった費用なのかは知らない。
   子守、女工、76円。
   女給、 83円。
   酌婦、 491円。
   芸者、 702円。
   娼妓、1011円。
 当時の一般労働者の月収10数円。
       大卒の初任給 70円。
三井銀行重役だった池田成彬の年収約5000円。
総理大臣の年収 1万円。