韓流三題

GFへ

 上でなにかやっていて、そのまま老眼鏡をかけたままで下に行ったら、何やら時代劇があっている。
――また、韓国の時代劇か?
――なん言いよるとね。よう見てごらん。
 テレビに近づいてみると、日本の衣装に見える。じゃあ何語をしゃべっているんだと良く聞くとなんと日本語らしい。『江』だった。
 今年は韓流。昨年は劇画調。その前かもっと前かの武蔵はいつまでたってもガキのままだった。もうNHKには自分自身のイマジネーションを持っている奴はいないらしい。だったら大金をかけた大河ドラマなんかやめてしまえ。みんなでメールを送ろうか? もし15000通以上「日本の恥だ。中止しろ。」というメールが届いたら、去年の大相撲のときと同じように、「これは大変なことです。」と本当に中止するのかな?(大相撲の話は、また別の時にする。今回の春場所中止には賛成)

 去年の暮れだったか、テレビに目をやったら、体をくねくねさせながら歌っている女の子たちのグループがいる。
――お前らねぇ、わざわざそこまで韓国人の真似をせんでも良かろうもん。
 と思っていたら、完全な勘違い。ホンモノだった。
――ごめん。すまん。ニッポンジンなんかと間違えて許せ。
 KARAというグループだそうだ。

 サッカー・ワールド・カップ決勝のボレー・シュートは何度見ても美しい。たぶん次のワールド・カップまであと10回は見ることになるだろう。その決勝シュートを放った李忠成の姓を「リ」と呼んだり、「イ」と呼んだり一定しない。報道機関が人の名前をばらばらに呼ぶ国ってそうないんじゃないかな。
 で、提案。
 日本国籍の人は日本語読み。外国籍の人は、できるだけその国の発音をカタカナ読みし、表記もカタカナ。漢字は()で補う。
 つまり、李忠成は、「李忠成(リ・タダナリ)」。韓国籍なら、「イ・ジュンソン(李忠成)」。北朝鮮籍なら「リィ・ジュンソン(李忠成)」となる。金さんなら、日本人はそのまま「キンさん」。韓国・北朝鮮なら「キム(金)さん」。中国人なら「ジン(金)さん」。第一、前にも書いたけど、テレビにはアルファベット表記で出ているのに、アナウンサーが勝手に漢字の日本語音読みをするなんて視聴者に無礼だ。選手名を覚えるのに時間がかかりすぎて間に合わない。NHKは誰に気をつかって面倒くさい方法をとっているんだろう? これもメールものだな。

 ついでにあと一つ。
 最近生徒の名前を見ていると、日本の人名漢字にない文字が目につくようになった。もちろんワープロの漢字ソフトが充実してきて大抵の漢字が出てくるようになったせいだろう。(なのに、吉田さんの吉で上が土のヨシが漢字辞書に入っていないのには何か相当にゆるがせにできない理由があるんだろうか?)が、日本で、日本人には用いることを許していない漢字を外国人にだけ自由に使わせる、というのははなはだおかしい。第一、そうしたら、漢検3級もおぼつかない者たちを文盲状態に追い込むことになる。(中国の人名漢字はどのくらいあるのか?1万じゃきくまい。なぜなら、漢族以外の人々が漢名を名のったり、漢字表記せざるを得なくなったりしているからだ。ついでに言うが、前にも言った通り、13億人のなかで純血の漢族なぞ幾らもおるまい。)
 日本国籍をとる際には、日本の人名漢字の範囲内の表記にするか、カナ表記を選ぶかにすればいい。外国人はすべて、カタカナ表記。漢字にこだわる人は、前に書いたように、()で自分勝手に補えばいいのだ。
 ついでのついでに言うと、韓国・北朝鮮の場合、姓が少なすぎるから、「イ氏」だの「キム氏」だのでは区別がつかない。だから「イ××氏」「キム××氏」と必ず姓名を呼ぶ。その際、子音と次の音をリエーゾンさせる。たとえば、「金日成氏」は「キミルソン氏」、「李忠成氏」の場合は、リエーゾンとまではいかないが、「イジュン・ソン氏」というふうに、姓の「李」だけを独立させて発音することはない。これは日本人にとっても区別しやすい方法なのに、「李選手」では、ほかのチームにも同姓がいるんじゃないかなぁ。

別件
 老人ホームのちかくでもジョービタキを見た。けっこう町中にまで飛んできているんだ。
 その老人ホームで、10年前のプロジェクトXを見た。襟裳岬に植樹をしつづけた昆布漁師の話だ。その人の顔は「不言実行」がそのまま表情になりきっている趣があり、神々しいばかりだった。われわれのような言葉を垂れ流ししている人間なぞ及びもつかない。(ごめん。二人を同類扱いしてしまって)「ずいぶん前に見た、アメリカ・インディアンの首長の写真もこんな感じだったな。」
 解説として出演していた安藤忠雄は直截に言った。
――けっして諦めないひとの顔です。日本人の顔です。