過去をもつ愛情

GFへ
 いよいよ押し迫ってきて、映画愛好会の最終回をどうするか考えた。
 最後は、とっておきの『過去をもつ愛情』でしめることにする。例の、アマリア・ロドリゲスが出てきてファドを歌うフランス映画だ。
 イギリスのお針子だった美しい女性が貴族のおじいちゃんに見初められて結婚する。結婚して幾らもたたないころにおじいちゃんが死亡する。財産を相続した未亡人は海外旅行にでかけ、ポルトガルのタクシー運転手の青年と恋に陥る。ふたりが最初にデートする場所でアマリア・ロドリゲスが歌っている。どんな歌かは知らないけど、男女のことを題材にした歌だろう。
 その未亡人を追いかけて、イギリスから刑事がやってくる。刑事は、ポルトガルの青年に、自分はただ彼女のアバンチュールの材料にすぎないのではないか、という疑念を植え付ける。
 そして、彼女がほんとうのことを打ち明けなければ、彼女の愛を信用できないようにしてしまう。せめて最後に青年の心を取り戻したいと決めた未亡人は打ち明ける。「私は夫を殺した。」
 青年は彼女を取り戻そうととするが、彼女は甲板で待っている刑事のほうへタラップを上がっていく。
 自分を理解できるのはその刑事だけだ、ということを未亡人は理解したのだ。

 昔の映画はよくできていたなぁと思う。(いまの映画は見ないから、いいも悪いも分からないけど)

 日本映画にも忘れられないものがある。
 題名は思い出せない。
 殺し屋の二谷英明が清純な浅丘ルリコと恋をして、その世界から足をあらう決心をする。そして、最後の大仕事をしたら、その金で浅丘ルリコと海外に逃亡することに決め、彼女を思い出の場所で待たせる。二谷英明は何の関係もない男を殺しにいく。ふいをつかれた男は逃げ場を失い、殺し屋の正面に立つ。「お前はただの野良犬だ」。冷然と拳銃の引き金を引いた二谷英明は浅丘ルリコの待つ家に車を急がせる。土砂降りになる。「お前はただの野良犬だ」という男の声が甦ってくる。そのとき、土砂降りのなかにヘッドライトに照らされたみすぼらしい犬が現れる。二谷英明は思わずハンドルを切る。車は谷底に落ちていく。
 場面が変わって、幸せそうな浅丘ルリコが映されたところで、エンドマーク。
 もし、題名がわかったら教えてください。VTRが残っているかもしれない。

別件
 絶滅危惧種が寝込んだ日はまる一日、一人と2匹の世話で終わった。
 そんなことをしていると、世界中で、自分たちだけが孤立しているかのような感覚になる。悪い気分じゃなかった。
 犬たちにいたっては、めずらしく一日中お父さんがいるのに興奮して、「さあ、さあ」膝に乗せろとうるさい。一匹が飛び乗ると、もう一匹も飛び乗りたい。で、けっきょく、一匹が膝に、もう一匹が腹に乗って、押し合いへし合いしながらも大満足だった。そんなこんなでチビどもは昼寝なしの一日を過ごす。
 いつもなら、夜11時ごろいったん庭に出て、おしっこをしてからベッドルームに入るのだが、9時すぎには早くも熟睡。「そと」と呼んでも反応なし。きっと疲れきっていたのだ。