ホンモノの幽霊だったりして

GFへ

東洋大のPが「お勧め」だというリービ英雄の『千々にくだけて』を読んだ。読んでいて変なことばかり考えていた。
性不同一障害というのがあるが、文化不同一障害というのもあるのかもしれない。
文化というのはもともと極めてドメスティックなものだ。すると、そこに帰属出来ない者は、どこに行ったらいいのだろう。
我々のように日本しか知らない者は、ここに属する以外の生き方は出来ないと最初っから思い込んでいるから、それはそれでいい。もともとWは、「おらが国には富士山がある」式の考え方が好きだった。いまもそうだ。
ひと昔前、どこかの国で人質になっていたアメリカ人が、解放された直後に、「ハンバーガーをほうばりながら、コーラをラッパ飲みしたい」と言ったという記事を読んで笑ったが、それも気に入って笑ったのだった。
何が言いたいのか自分でも分からなくなってきたが、要するに、リービ英雄には、我々の『ぐじの塩焼き』にあたるものがないのではないか、と感じたのらしいのだ。
だったら、対話は成り立つまい。にゅうめんを知らなかったら芭蕉は分からないだろう。芭蕉の真骨頂はそこにあるのだから。
Wには、文化とはそういうものだと思えるのだが如何?

別件
1年間授業に行ったクラスの生徒とお喋りをした。
ーー先生ともお別れですね。
ーーいや、4月になったらまた、ドローっと幽霊みたいに現れるかもしれないぞ。
ーーホンモノの幽霊だったりして。