『バカボンド』はいい。

2009,6,19読書教材より

 第何号かに、「生物学的な男女の差は0,00001くらいしかないと思う。」と書いて以来、変な所にはまっている。
 先日、テレビをみていると、九州でプロを目指している若いミュージシャンたちが集合して競っていた。「こんなに個性的な若者たちがいるんか」と心強かった。ただ、その自作の歌詞に「ありのままの自分でいたい」というメッセージが何回か出てきたのが気になった。
Wの学生時代にも似たような歌詞の歌があった。が、それはむしろ「ありのままでしかない君と僕がいた」のように、マイナス・イメージだった。
 Wの時代には、「ありのまま」でいられるのは女の子の特権だった気がする。男は、「ありのままの自分」をかなぐり捨てることで社会人になっていった。自分が好きになった女の子が「ありのまま」でいつづけられるために。それが男の誇りだった・・・・気がする。君たちのお父さんやお母さんの時代の話だ。
 今年25・6歳になる君たちの先輩の三者面談のとき、お父さんと話した。大学の同級生同士で結婚したのだそうだ。「こいつがお腹にいるときライブにいくと言い張るのでついていきました。みんな総立ちになってピョンピョン飛び跳ねるのでハラハラしてくっついていました。」年齢をきくとWと同い年だった。
 その生徒が親になったときに一言だけ忠告した。「いいか。自分に誠実である前に、自分の義務に忠実であれ。」
 クサクかった。
 だが、彼は、そっぽをむいたままでうなずいた。たぶん、同じことを3年生のときにも言われたのを覚えていたのだ。


別件

 生徒から借りていた『バカボンド』をもどした。
――どうだった?
――面白かった。まだの者はぜひ読め。
――どこが面白かった?
――宮本武蔵が成長していくと同時に、漫画家も成長していっている。
――うん。最初のうちは顔の区別がつかんかった。
――『スラムダンク』のころはもっヒドかった。
――つづき読みますか? 持ってきましょうか?
――うん、頼む。
 いつの時代の少年も、ビルドゥングロマンを欲しがっている。しかし、それが、『カムイ外伝』だった少年は、いったいどんな大人になっているのだろう。