浦上天主堂の復活コンサート

GFへ
 ヒ素を食べて生きる細菌が発見されたという記事の横に小さく、何年かまえに旭川で発見された「○○クマムシ」のことが載っていた。もちろん日本人が見つけたものだ。
 完全に乾燥させても生き返る。乾燥させたら、温度を200数十度まで上げても、液体窒素につけても、気圧を100数十度まであげてもまた生き返る。完全復活をするのだという。
 「そりゃすげぇ。」と言った次の日、まるでごろ合わせみたいだが、NHKマーラーの「復活」をやっていた。
 もう15年は前になるだろうか。たしか三菱が×××周年記念行事として小澤征爾を長崎に呼び、浦上天主堂で「復活」を演奏するというしゃれたことをした。「その場にいたい。」と応募したら、二枚あたった。「オレは〇月〇日は発熱するからな。」ところが当日、避けられない仕事がができてしまい、絶滅危惧種がひとりででかけた。もう一枚の切符は、券も持たずに来ていた熊本大生に譲ったそうだ。
 帰ってきたので、「どうだった?」と聞くと、「小澤が今度きたらきっと行き。」まだ興奮していた。落ち着いてから聞くと、「キリスト教徒もいいなぁち思った。」ほんとうに良かったのだろう。ただし、宗旨替えする気はなかったみたいだ。
 テレビでは、下に歌詞の字幕がでる。「あなたが撒かれた種はかならず復活する。だから、わが魂よ、死のときに、再び生きる覚悟をもちなさい。」・・・・これって、ほとんど曹洞宗のイトコが言っていたことに近いんじゃないか?
 弟の葬式にイトコは修行僧の格好をして現れた。式が終わってがらんとなってから祭壇の前に行き、何やら呪文のようなものを称えてから、「キエーッ!!」と気合いを入れた。なにをしたのか、と聞くと、「お前の弟が迷わないように、この世との縁を切った。」その前の呪文みたいなのは何を言ったのか? 「お前はこの世にいるとき仏になるための修行を怠けてばかりいた。こんどこそしっかり修行して仏になれ、という意味のことを言った。」
 だれかから、ハーンの文章を教えられたことがある。「おばさん」という題名だというが、市民図書館にある全集では見つからなかった。
 「おばさん」は、自分のことは一切省みず、ひたすら家族のためにだけ生きて死んだ。もう一度会いたいと思うけれど、この国の人の話では、あのような人は成仏するという。成仏した人はもう輪廻から解脱する。だから、私はもうあのおばさんには会えない。
 そんなストーリーだったという。なにか、どこか、先住民にとっては理不尽なところがある。ハーンもそう感じたのではないか。
 マーラーの「復活」の詞を書いたのは誰か調べてみよう。多分やはりロシアの人だろう。あの人たちは西洋と日本の中間的存在だ。(もう東洋という言葉は使わない。中国や韓国はあまりにも異質い感じるようになった。その異質に感じる日本人が目立つようになってきたのが気になるけど。)
 幕末のフランク、20世紀のバルトーク。先住民の息子が「オレたちの音楽」と感じる人だが、そのバルトークには、さらに仏教以前の日本を感じる。それを一言で言うなら、「山川草木」――ある研究授業を見たとき、中年の女性教師が、「やまかわくさき」と読んだ。以後もうまともに口をきく気がしなくなった。――「悉皆成仏」的世界のことだ。
 幕末のフランク、20世紀のバルトーク、と覚えていたが、彼らと同年代の日本人は誰だろうと調べてみた。勝海舟はフランクの一年後に生まれている。バルトークより先に生まれたのが島崎藤村、あとに生まれたのが芥川龍之介。ついでに「若菜集」は1897年かに上梓されている。藤村は前々世紀の人なのだ。
 自分は、もう一度復活なんかしたくない。ただし、輪廻転生は信じることにした。後生はまず、菫ほどの植物がいいかな・・・・。だから、これからも、思いっきり怠けて生きることにする。

別件
 今度送る予定にしているのは、田村隆一についての文章。その全集第一巻を購入しようと思っている。全6巻。来年一年かけて、時間の順番通りにあの人の詩と文章を読んでみたい。