低気圧通過中

GFsへ
 本日は低気圧通過中。公園の桜が一気に散り、消え残っている雪を見ているようだった。
 何年前になるか、夜の公園にチビたちを連れていったとき、散り敷かれた桜の花びらがライトに照らされて真っ白に見え、遊びにきた子どもたちが「わーっ」と声をあげたことがある。こちらも何かぼうっとなった。高木恭造ふうに言うなら、「もう死んでもいい」気分だったのだろう。
 武田邦彦の評判があまりよろしくない。大分の友人は「セクハラおじさん」のようなイメージだったというし、書呆子にいたっては、「信じられないのを通り越して、許し難い目立ちたがり屋」らしい。こっちは今回初めて知った男で、顔も話し方も知らないけど、いちばん知りたいことをはっきり口にしているので信用するというより、ほっとした。
 書呆子のいちばんの批判は、「原子炉の格納容器が爆発するかも知れない」などという流言飛語を発した、ということにあるらしい。しかし、自分が聞いた範囲では、「爆発はしない」と断言した専門家はいなかった。それがいちばん気にくわなかった。せめて、「私は爆発までにはいたらないと予測しているが、0,001%くらいの確率でその可能性がないわけではない」くらいは言えないのか。「そんな数字を出されても素人には判断のしようがないではないか」という人もいるだろうけど、「降水確率10%」で傘をもってでる人はほとんどいまい。素人もそれなりの判断基準をもっている。もちろんNHKで「爆発するかも知れない」と直接的に言ったらパニックが起きただろう。が、パニックを起こさないために、ものごとを曖昧にしてしまうのは政治的判断だ。政治的判断は政治家にまかせて、専門家はできるだけ自分の知見を素人にもわかるように披瀝するべきだ。じっさいに武田さんのHPを知らない人でも、恐怖を感じていたひとはたくさんいる。むしろ言わないことが猜疑心を生む。
 武田さんのHPには3月20日すぎか、「もうこれ以上の悪化はしない」とあった。それがいちばん知りたいことだった。さらに4月に入って、「放射能の量は、この先ふえても今の2倍以内におさまる」と書いている。これもいちばん知りたいことだった。かれには、素人が何を知りたがっているかを見る目がある。そのかわりにショートカットした部分は大きいだろうが、そんなことは一向にかまわない。ただし、かれの計算が的確なものかどうかを判断する材料はこちら側にはまったくない。そんなことは常にある。だから、素人に大切なのは「その人の言うことが信用できるかどうか」のカンを養うことだ。先住民の息子は武田さんの言っていることを信用できると判断した。
 逆の話になるが、Gの大先輩の話によると、「2年以内に巨大地震が発生すると、ちゃんと言っていた」という自称学者がいるという。そういう人はまったく信用しない。きっとどこかで実際に言ったのだろう。が、ただの言いっぱなしだった。もし、自分の判断を10%程度でも信じていたのなら、その後も、周りから気狂い扱いされてでも、命がけで大声を出しつづける義務があった。「あと1年以内に巨大地震が起きる」「あと半年以内に50㍍を越える大津波がくる」「もうすぐ来るから今のうちに逃げろ」大切なのはそういうことだ。それも「政治的判断」でしなかったのかな。
 もうただのクズだとしか見えない今の首相が、原発周辺には今後10年か20年か住めなくなるかもしれないと、言ったとか言わないとかで袋だたきに遭っているが、なんだか気の毒な気がする。(第一そういう話が漏れるというのは、もう政権担当能力の完全喪失としか見えない)ほんとうにそうなる可能性がある。「そうならないように皆が必死になって努力しているときに、冷や水をぶっかけるのか」「当事者のきもちをわかっとるのか」というのは感情だ。もちろん政治家たるものの言動はその感情を敏感に感じとって行われなくてはいけない。けれども、「ほんとうのことを言ってはいけない社会」は、やはり病んでいる。現実をごまかしたり、問題をすりかえたりしている間は前に進めない。でも、そんな社会にした元凶のひとりはあんたなんだかんね。
が、(今日は逆接だらけの気がするが)こんな話をぶつぶつできるようになって、ともかく良かった。と言って、まだ、当事者たちを信用したつもりはまったくないけど。

 
別件
西田敏行が郡山の出身だということを今回はじめて知った。われわれの1級上か下かだろう? ただし、15歳までだったとあるから、安積出身ではないわけだ。
②飯塚に行ってきた昨日のこと。帰りのバスが終点に着いたとき、学生帽をかぶっている高校生が「プリペイドカードに入金したいけど、一万円札しかない」と申し出ていた。西鉄バスはたしか、5千円まで。
運転手さんいわく
──嘉穂やろ? じゃ、バスセンターで入金するときに今の運賃のことをちゃんと言いなさい。
──はい、ありがとうございます。
 あの町では、わが母校の信用力はまだ衰えていない。あるいは、運転手さんもOBだったのかもしれない。