2年目のジンクス

2年目のジンクス       2011/05/09
 毎朝、大リーグ中継を見ながら飯を食う。これこそがわが憧れの暮らしだった。見るのは以前からレッドソックス中心。(前にも書いたが、我が家にスカパー!を入れたのは黒木と松坂の投げ合いを見たかったからなのに、その年、松坂は大リーグに行き、黒木は故障してしまった。松井がいなくなってからはヤンキースの中継が減った感じがする)お陰でいつのまにかレッドソックスの選手はだいたい頭に入っていたのに、またメンバーがかわっている。これが、せめてパリーグなみにメンバーが想定できるようになったら、面白さも増すのだろうけど、そこまでは行きそうにない。
 何年前か、たまたま阪神の試合をつけたら、セカンドに平野がいる。「こんないい選手をなんでオリックスは出したんだ!!」と叫ぶと、「フリーエージェントやろもん。」いつのまにか絶滅危惧種のほうがくわしくなっていた。
 この間、日ハムの八木をひさしぶりで見た。いいピッチングをしている。(去年までとどこがどう違うのか、さっぱり分からないけど。ヤマカン的に言うなら、投球モーションを起こしてから投げるまでに一瞬の間がとれるようになったか? あとひとつこのごろ気になりだしたのは球を話す瞬間の肘の位置だ。)今年はローテーションを守れるかもしれない。一年目に大活躍して以来、いったい何年間ブランクがあったのだろう。
 かれがデビューした年、ホークスなどはまるっきりバッティングになっていなかった。まともにバットに当たらない。それを解説者が次のように説明していた。
 「プロのバッターは、ピッチャーの足の動きに合わせてタイミングをとります。ところが八木の場合、下半身の動きと上半身の動きがばらばらなんです。だからタイミングが合わないんです。」
 そこからが面白かった。
 「でも、プロはアマチュアと違って、一年間ずっと投げつづけます。その間に自然に体の動きの不自然さが修正されてきます。そうしないと故障します。つまり、一年後には上半身と下半身の動きがスムーズになります。そうするとバッターはタイミングがとれるようになります。それが二年目のジンクスです。ホークスの杉内もそうでした。それを克服してはじめて一人前のプロのピッチャーになれるんです。」
 その解説者の予言通り、八木は二年目は最初に少し勝っただけで、あとはローテーションからはずれた。ホークスの三瀬も最初の年だけ。日ハムの木田は一年目に20勝ちかくしたんじゃなかったか。あとはまったく通用しなかった。ここまでは全部サウスポーなのが気になるが、阪急の三浦(だったかな? 福島県出身で「玉三郎」と呼ばれた少年。)も2年目からどうしたのかはまったく知らない。
 2年目に打たれまくった杉内は、3年目にまったく別人のようなピッチングをしはじめてローテーションに食い込み直した。かれの最大の武器だった、頭の上から曲がり落ちてくるようなカーブを封印して、真っ直ぐと寸分変わらない腕の振りで投げるスライダー。ほとんどその2種類しか投げない。(いまも基本は同じ)球種が少なすぎて狙われそうなんだが、抑えられる。そのかわり一度打たれだすと、もう止まらなかった。(いまは相当に進歩している)
 プロの野球というのは、なにか別次元の世界なんだと感じる。
 いや、プロの世界は、相撲でも、サッカーでも、将棋でも、やはり同じ。何度も何度もおなじ相手と対戦する。ただし、プロ野球のように、3回に1回勝ったら勝ち。3回に2回しか勝たなかったら負けという勝負事はそうないのかもしれない。
 ホークスの斉藤が復活を目指して練習を開始したそうだが、たぶんもう無理だろうと思う。快復するとちゅうまではいける。が、本番同様に投げはじめたらまた故障する。ロッテの黒木がそうだった。
 稲生、江川、木樽、黒木、斉藤。いずれも体がキャッチャーに正対して、腕が背中から出てくるような奇蹟的なフォームだった。昔のピッチング・マシンを見ているようで、ギリギリギリ、ビュン、の感じ。みな投手寿命が短かった。
 中日の与田、阪急の山口。それから稲尾監督の時代の中日の抑えはなんといったろう。体は大きくなかったが、二段ロケットのようにシュシュシュッと伸びてゆく真っ直ぐを投げた。あんな球は大リーグでも見たことがない。すぐに故障してしまった。もったいない。
 今年のファルケンボーグのまっすぐは見ているだけで気持ちいい。森福がなぜ打たれないのか分からない。球の角度がバットの軌道と合わないふうに見える。それだけ球に切れがあるということなのだろうか。
 別件的になるが、隣がもと西鉄の投手だった××の家だという友人がいる。西鉄が一番苦しかった時期のエースだった下関商業出身のピッチャー。八百長事件に巻き込まれて引退させられ、名誉回復したのはほんの数年前。まだラジオの時代だからどんなピッチング・フォームだったかは知らない。「紳士だよ」とその友人は言う。

別件
 昨日は母の日。老人ホームの母の部屋ですごした。「なんね。来とったとね?」横のベッドでうつらうつらしながら目を覚ましては同じことを言っていた。
 国連の推計では、2100年には、我が国の女の平均年齢は95歳になるという。もう関係ないといえばそれまでだけど、恐くなる。
 我が家のもと良家のお嬢様は、すでに94歳にならっしゃった。残念ながら、ホンモノのばあちゃんにしてやることは出来なかったけど、「こげなりっぱな息子をもって文句を言いよったらバチがあたるばい」