オレのほうに勝ち目がある気がする

2011/08/20

 昨日、高校福岡支部の同窓会。ホテル・ニューオオタニの大広間ぶち抜きで、千人ほど集まっていたそうだ。会員が3000人くらいということだったから、すごい参加率になる。震災の影響もあったのかもしれない。
 参加者の中の大先輩は、もと西鉄の社長や会長を歴任した大屋もと支部長。もう86才ということだが、オレよりよほどしっかりした話し方だった。
 乾杯のあと、「も少ししてから挨拶にいこう」と思っていた担任が向こうからやってきた。
──おい、こら。貴様はオレを無視してばかりいるが、オレは貴様を意識しとる。これからは、どっちが長生きするか勝負ぞ。なんとなくオレのほうに勝ち目がある気がする。
 近づいてきた本当の目的は、となりに坐っていたかわい子ちゃんだと分かっていたから、すぐに席を譲った。
 心話文。「アンタはそろそろ80やろ。でも、ほんとうにアンタのほうが勝つかもね。ただし、オレのことはいずれ風の噂で聞くだけで、そのころにはアンタはもうオレの存在自体を忘れとるやろ。オレのほうが勝ったときは、こいつらと必ず弔いにいくきね。」
 高3のとき、「お前は悩みに恋しとるようだな」と言った男だ。あの時から、教師と生徒というよりは、どこか男同士みたいな感じがあった。ほんなこつ有り難うございました。恩を忘れたことはいっぺんもないとですよ。ただ美人の奥さんがわれわれの先輩だという点がなんとも気に入らんやったけど。
 懐かしいひとからいろんな話を聞く。フェルメールの話。国内・国外の冒険旅行の話。その相棒たちの近況。
──あんたの話を聞いた記憶がない。あんたはだいたい聞き役ばっかしやったもん。 そうか、小学校のときから聞き役だったのか。
──みんなそれぞれ、もって生まれた役割ごたあもんがあると。
──それ、それ。あたしもこの頃そう思う。やっと親の世話がすんだと思うたら、今度はおばさんの世話がまわってきた。年下のイトコが先に死ぬとやもん。そのイトコの葬式もアタシがしたとよ。やっと自由に羽ばたこうと思うとったとに。
──世話しながらやっぱ羽ばたかな。
──そうねぇ。
 はじめて2次会にも参加した。会場から人間がはみ出して、外にテーブルや椅子を自分たちでつくってわいわいやっている。そのうちにデュエットがはじまる。たぶん40人ちかくいたんじゃなかったか。なかには、アメリカから帰国中という女の子もいた。
──あんたの新しい名前はややこしうして覚えきらん。
──うん、旦那はインド系なっちゃね。
──そんなら、いい男やろ。
──そいでもないと。
 そういえば、一次会の席に自慢の息子をつれてきて挨拶させた者もいた。
──まだ嫁さんももらいきらんでおるっちゃん。だれか世話してよ。
 そろそろ帰るという幼なじみと一緒に出てタクシーに乗った。
──毎年一回、高校時代にもどってテンションがあがろうが。それはそれは楽しいとばってん、家に帰ってテンションが下がってからがきついと。でも、来年また会おうね。
──家、こっちやったね?
──あんたたちをせめて博多駅まで送りたかったと。
──ほんと。ありがとね。
──うん。じゃね。
 来年もいくかどうかはわからない。が、また会いたいと素直に思う。

別件
 飯塚で「明治6年創業」という看板が出ていた店が、売り家になっていた。
──アタシたちいい時代に高校生活をおくったね。町もひとがいっぱいで賑やかやったし。
──市長(同級生)に「どげかならんとね?」ち言うたけど、ちょうど選挙前でね、はっきりしたことは何も言わんやった。