男は自動巻腕時計と同じだ

2011/08/28(日)

 「男は自動巻腕時計と同じだ。働かなくなったら中身まで止まってしまう。」
 白黒テレビ時代のベン・ケーシーの患者が待合室で横の女性に話しかけたことばである。なんだか妙に気に入って、ずっと覚えていた。けど、もう「自動巻腕時計」じたいが分からなくなってしまったな。
 朝の散歩をゆっくりとした。もう日射しが気にならなくなった。帰り道で、近所の人が集まっているのでよく見てみると、見かけたことのある犬が公園をうろついているのに出くわす。
──たぶん、その犬の家を知っています。ちょっと待っててください。こいつらを家に戻してから戻ってきます。
 犬仲間の方に頼んで、チビたちを連れ戻してから公園にもどり、綱をもつとしっぽをふりやがる。「だったら、毎日大声で吠えるな。」この家だったはずだというところまで行くと、さっさと自分から庭に入った。「あらまあ、すみませぇん。」
 以前、夜の散歩のときに見つけたライにいたっては、「お前、ライやろ?」と声を掛けると、向こうから寄ってきた。首輪をしていなかったので、腰のベルトをはずして首にかけ、「さ、帰るぞ」というとトコトコついて家まで帰る。そういえばあの時も、家に帰り着くと、お礼も言わずにさっさと家に戻りやがったな。
 NHKBSの番組によると、野生動物の家畜化は、その子どもの特性が残る形で人間への警戒心が起こりそこなったのだという。つまり自分たちは人間の子どものつもりなのだ。いつまでたっても可愛いはずだ。
 明日から「通勤?」が始まる。
 思い返してみればこの5ヶ月は、34歳のとき以来の、なんとも贅沢な休暇だった。体を移動させることの楽しみも確かにある。香椎線の車窓からの田園風景は、思いがけぬ余録だった。

別件
 白川静対談集を読み終わった。
 次回、まとめて報告する。