的野先生の教え子が身近にいた

2012/06/24(日)

 先週のつづきみたいなことを書きます。
 ただいま、母親が暮らしているグループ・ホーム。
 「ああ、ちょうど良かった。今日、歯が一本取れました。抜けたんじゃなくて折れたみたいです。本人はなんともありません。明日、××歯科に来てもらいます。」
 いまのテレビでは懐かしいジュディ・オングが歌っている。見かけは相変わらず若々しい。しかし、もう肝心の声が出ない。声の整形手術というのはまだできないんだろうな。
 今日、氷川きよしは出るんだろうか。
 ホームに「きよし命」のおばあちゃんがいる。誕生日のお祝いにホームからバカでかい氷川きよしの顔写真パネルが贈られて、部屋に飾ってあるそうだ。その方が職員に、パネルの位置を変えてくれと頼んでいる。「あげん見つめられたら眠られません。」
 もう90過ぎなのに、いや90すぎだからか、幼女のような清らかさがある。
 
 今日の話は、内田樹『最終講義』に入っている政治の話。北方領土についてです。
 例によって回り道から入るけど、ソ連崩壊のとき、チャンスだとみて日本は、北方領土返還への秘密交渉をもったらしい。ソ連が金がいくらあっても足りない時だったからじゅうぶんに可能性はあった。現にドイツは数百億ドルの買値で東ドイツを取り戻した。が、日本は失敗。
 その主な原因は、買値を渋ったからだと睨んでいる。
 日韓交渉や日中交渉の時のように「できるだけ安くする」のが国益だと思い込み、値切るのが自分たちの能力の見せ所だと心得ていたらしい。(ただにして下さった中国の寛容さがどれほど高くついているか。竹島問題を棚にあげるくらいなら、どれだけ裏金をつかっても損はしなかった)
 切れ切れの情報では、数十億ドルを提示して蹴られている。なんで切りよく100億ドルにしなかったのか。「百億ドルかゼロか」の選択だったら、話はまったくちがっていたろう。
 内田樹によると、もと外務事務次官が「3,5島返還論」を唱えて国賊扱いをうけたらしい。
 歯舞、色丹、国後と、択捉の4分の1くらいでちょうど総面積が半々になるので、それで手を打とうということだったらしい。いいじゃないですか。それしかあるまい。それで日露間の喉に刺さった骨を取りのぞいて自由を手に入れよう。チャンスはプーチンが権力を握っている今、民主党政権の今しかない。
 ロシアとの間に本格的な交流を取り戻すことで、この国の選択肢がひとつ増える。そのために邪魔になることはさっさと片付けるほうがいい。(竹島尖閣列島も、いまさらどうにもならない)
 いま考えると、鳩山は自分が首相のときに、なぜ電光石火で手を打って、非国民扱いを受けなかったんだろう。そんな扱いを受けること自体は平気なはずなのに。
 機を見ることができなかったのだな。そういのを頭が悪いという。
 繰り返すが、チャンスはいましかない。臆病な自民党アメリカとの関係悪化にも国賊的誹謗中傷にも耐えられない。両国のいまの政権同士でしかまとまらない。
 もし返還が実現したときは、もちろん4島で暮らしている人たちには永住権を与える。希望すれば帰化もできる。本土への移動も自由だ。彼らの私有財産は百%保証される。(もと住民にたいしては金でカタをつけるしかない)
 ついでに新国境地帯に無関税の自由貿易圏を創る。
 それらの交渉は一気にかたづけないと必ず頓挫する。そのあとに残るのは閉塞感だけだ。

 ついでにホラ話を。
 選挙で負けるまえに現政権に道筋をつけておいてほしいことがある。
 数万トン規模の災害救助船を数隻建造して、つねに日本および太平洋や南シナ海の友好国海域を遊弋させる計画だ。一隻の収容人員は5000人から1万人。
なにかあればその船内で一ヶ月は暮らせるだけの施設と物資を備える。
 甲板は大型ヘリの離着陸のためにヘリポートだから外観は空母と変わらない。が兵器は最低限しか備えないから超安上がり。そして、日本海周辺では常にその巨大な姿が見られるように配置する。なんなら赤十字の大きなマークを掲げておく。
 「オレの領海には来るな」というところには勿論行かない。が、なにかあったときには「いつでも呼んでくれ」というサインは出しつづける。
 その災害救助艦隊の運用はやっぱり自衛隊じゃないと無理だろうな。そうしないと余計な金がかかる。

 ついでのついでに原発についても一言。
 今回のことで、日本の原発への信頼度は格段に増したはずだ。なにしろ、1000年に一度の大災害にも持ちこたえたのだから、そこにはきわめて用意周到な手当が講じられていたことになる。が、売り込みの際にけっして忘れてはいけないことがある。それは要員の教育の大切さだ。ハードだけではまったく足りない。むしろ、人間が原発を守ったのだということを力説しよう。
「人を育てましょう。」

 きれいごとで終わるのは後味が悪いから、もう一言。
 竹島はもう韓国が実効支配しているのだから、口先で「不法だ。不法だ。」というより他には、日本に打つ手はない。
 尖閣諸島がそうならないように、日本は本気だというサインをつねに発信することだ。と同時に実力行使には実力で排除する腹をがっちりかためなければならない。そのあとに何がおこるのかは見当がつかないが、たとえそのために生じる「損」がどんなに膨大であっても怯まないこと。そのかわり前もって計算し、準備を整えていなくてはならない。その準備のなかには、実力行使を回避するほうを中国が選ぶに足るだけのウマミを常に残しておくこと。
 外交とはそういうものだし、政経分離なんて絵空事でしかない。

別件
 一昨日の歓送迎会は賑わったようでほっとした。(あるいは一人で賑わっていたのかも知れないけど)
 そのとき、いま向かい合わせで仕事をしている女性が、数年前に亡くなった男の教え子だとわかった。「三年生のときの担任でした。とても可愛がってくださいました。」すでにお酒が入っていたし、それだけでもうその女性が他人とは思えなくなった。
 糸島高校だったという。ということは的野雅一も惑堂先生「渋茶会」の会員だったのかもしれない。
 そのの俳句を再録する。
        百済より飛鳥に孵る寒茜