高木恭造『まるめろ』

 昨日、宣伝だけで終わったので、高木恭造の詩で大好きなものを紹介します。ただし、もっとも好きな詩はソノシートの中にだけあるので、当分は復元できない。



生活(くらし)

──結婚(しゅうげ)の晩(ばげ)


あれぁ風(かじぇ)ぁ吹いで
ドロの樹(ぎ)ぁじゃわめでるんだネ
泣ぐな
泣ぐな
花嫁ぁ泣ぐ奴(やづ)ぁあるガ
銭(じこん)コねはんで泣ぐのガ
なんだて こした貧乏(びんぼ)くせい結婚(しゅうげ)サねばまいねのガ

 (みんな飯事(おふるめご)だど思れ)

痩へだ体コくつけでも
なんも温(ぬ)ぐくねジャ
ああ 俺達(おらだづ)二人ぁ
日(し)あだりぬすむ蠅コど同(おんな)しだ
明日がらお前(め)も紫(むらさぎ)の袴(はがま)コはいで黒いまんとコかぶて役所サ行(え)ぐのガ
貧乏(びんぼ)臭(くせ)い婿(むご)と花嫁だ
泣ぐな
泣ぐな
なんも恐(おがな)くね
あれぁ風(かじぇ)ぁ吹いで
ドロの樹(ぎ)ぁじゃわめでるんだネ

        ※じゃわめで=ざわめいて 



すかんこの花
 
何ぁどんだどもなぐ かちゃくちゃネのセ
別(べづ)ネ生きてぐね訳(わげ)でねんども
桜(さぐら)の花コァ散てまてこの曇(どんよら)どした空
ただ こたら時(どき)ぁ 死んでもいいど思るンだネ
路傍(けどばだ)のすかんこバふむって囓れば
埃(ごみ)かぶてもあんづましぐ咲いでるすかんこの花

※あんづましぐ=完璧に


冬の月

嬶(かが)ごと殴(ぶたら)いで戸外(おもで)サ出はれば
まんどろだお月様だ
吹雪(ふ)いだ後(あど)の吹溜(やぶ)こいで
何処(ど)サ行(え)ぐどもなぐ俺(わ)ぁ出はて来たンだ

 ──どしてあたらネ憎(にぐ)くなるのだベナ
   憎(にぐ)がるのぁ愛(めご)がるより本気ネなるもんだネ
そして今まだ愛(めご)いど思ふのぁ どしたごどだバ

ああ みんな吹雪(ふぎ)と同(おんな)しせぇ 
過ぎでしまれば
まんどろだお月様だネ

※まんどろだ=まん丸の