2010-01-01から1年間の記事一覧

「日本人っぽさ」について

GFへ 今年のお盆もウロウロしているうちに終わった。おかげで楽しみにしていた下関美術館と佐世保ちかくの小さな都会へは行かずじまい。(佐世保のほうはまだ狙っているけど。そうだ、相浦町だ。)二カ所の墓参りと大塚先生の初盆、それに昨年からは老人ホ…

保田与重郎ぬき書き―2―

保田与重郎ぬき書き―2―近世の唯美主義 ・芭蕉の深刻な偉大さや秋成の峻烈な精神よりも、私には蕪村のあの大様の春の絵巻風の世界のもつ永遠ののどかさと、永劫の郷愁、あるいは無限の叙情の悲哀と雄大な絢爛、さういふ混淆の中に、大洋の感情を思はせるやう…

洲うた―1―

GFへ ずいぶん前から、ぐちゃぐちゃ言っている戯曲だか小説だか雑文だか訳の分からないものの題名が決まったので、ともかく報告します。 『洲(しま)うた』 題名だけはなかなか高尚になった。「しま」は「島」でもあるが、もともとの日本語の「しま」は、あ…

内田樹講演要旨

福岡市国語部会の会報誌2010号に昨年の内田樹講演の全文が載っていた。が、「はて、こんな内容だったのか」と感じた。たぶん、先住民の息子は例によって、聞きたいことだけを聞いたのだろう。 で、自分が聞いたことと、聞きながら考えたことをここに残してお…

北大津高校野球部

GFへ 迷うな。ひるむな。一歩もひくな。 残念ながら、わが夢の高校、嘉穂の校訓ではない。北大津高校野球部の合言葉らしい。彼らは「覚悟の野球」を追求していて、毎日、「4つの覚悟」を斉唱するのだという。そんな学校、あんな目をした高校生がいるのなら、…

「階層社会」について

GFへ 例によって、思い出話から。 10数年前、日本語を学んでいるオーストラリアの大学生と話したことがある。日本人がすでに喪って久しい謙虚さを感じさせる若者で気持ちがよかった。「自分の学校の生徒は勉強しなくて困る。」というと、「大学の先生から…

保田与重郎『後鳥羽院』抜き書き―1―

「日本文芸の伝統を愛しむ」 ・もののあはれといふ歌のみちは、男と女との間のはしをうたふことであった。 ・家持から王朝の美女の文学が発生する素地がきづかれた。後宮を中心とした機智の文学は、家持のサロンに於いて早くきづかれてゐた。のみならず、こ…

白鵬に期待しよう

GFへ 先週辺りからか、「暑いですね。」が決まり文句になってきた。それはいいのだが、「今年の暑さは特別ですね。」と言われると、そうかなと思ってしまう。日常のあいさつ代わりの会話だけでなく、テレビのニュースキャスターまでがそう言う。――ここ40年く…

「いさよふ論理」について

GFへ 前回だったか、日本人の論理は「たゆたふ論理」、「やすらふ論理」、「「いさよふ論理」なんだ、と書いてから、自分の考えている西洋の直線的論理と日本の論理とはどうちがうのか考えてみた。 いつも通り昔話からすると、高校生のとき、教科書を読ん…

小論文講座

小論文講座 作文をにがてな生徒がなんとなく好きだ。 小学校のとき作文の宿題がでて、いっしょうけんめい書いて出したら、先生がみんなの前で読んでくれた。読み終わってから先生が言った。「みなさんは、この作文をどう思いますか? これは嘘です。子供がこ…

『さあ考えよう』3

教科書を離れる授業のあたらしいプランです。 生徒たちはけっこうのってきた。 あなたは、社員一万人の清涼飲料水会社の社長です。その会社は一日あたりの売上が十億円、利益が二億円ある優良企業です。 ある日、社内メールに、「四週間ほど前、2〜3本の缶に薬…

『蕨野行』とムーザ・ルバッキーテ

GFへ 村田の喜代子「蕨野行」を昨夜読んだ。いわゆる棄老伝説にもとづく物語ではあるが、「楢山節考」とはぜんぜん別の世界があった。読み終えたあと、なにも考えずに、実に安らかに眠った。あんな読後感は記憶にない。しあわせだったというのとも、充足感を味…

匹夫有責

GFへ 及川から久方ぶりにメールが届いた。 いろんなことを考えているようだが、行きつくところは、残された時間がどんどん少なくなっていくなかで、次世代にわたすべきものは何か、ということに尽きるようだ。 そして、年賀状にあったのと同じことばが出て…

サッカー追想

Fへ 去年のことだったと思うけど、サッカー好きの生徒と話していると、「本田はヤバイですよ。あいつのプレーは日本人には見えません。」という。当時は顔も知らなかったから、「そうか。」で終わったけど、その生徒の眼力は相当のものだったらしい。おかげでゴ…

政党の既得権排除を――定数の大幅削減による政治の活性化

現在の政治の混乱は、ただの数合わせのための国会議員乱造と、数の力だけに頼って議論らしいものが政党内部でさえも行われていず、いわば「ノリ」でものごとが決まっていくことにあると見受けます。 そこで、以下のことを提案します。 1、参議院から政党性を…

はじめにことばがあった。それは「神」ということばだった。

GFへやっとすっきりした。だから、どうなるというわけではないけど、「神の発見」を読む準備は出来たようだ。 あとは別件だらけ。 グウスカ寝ていると、寝室が騒がしくなって目が覚めた。「3ー1で勝ったよ。」 なんと、絶滅危惧種は夜中にテレビを見てい…

神はことば(にすぎない記号)だった?

GFへ 昨日考え始めたことがある。 まだ全然まとまっていないけど、ともかく書きはじめてみる。 日曜日に『神の発明』(カイエ・ソバージュ)を開いてみた。まだその何ページ目かなんだけど、何かが気になって途中で読みさした。 ──「神」はことばだった。…

森本能舞台

GFへ どうも疲れが取り切れない。昨夜は8時過ぎに寝て、今朝起きたのは11時だったのに、まだ体も頭もだるい。 サッカーはラジオで聴いた。「先に一点とったら引き分けに持ち込めるかもしれない。」しかし解説者は、「前半は0―0でいいんだ」という。「攻める…

いまから「正義」の話をしよう・・・・

教材から 君は高速道路を走るバスの運転手だとします。その日、満員の客を乗せて、片側2車線の左側路線を時速100キロで走っていました。ところが前の車が急に停止しました。追突を避けるためにあなたは、右に急ハンドルを切り、追い越し車線に入って停止した…

辻征夫について

GFへ 『ボートを漕ぐもう一人の婦人の肖像』のふたつ目まで読んだ。 前回か前々回の手紙に、「オレに似ている」と書いたのは取り消します。似ているところは確かにあるんだけど、Wより一桁スゲエ。――二桁とは感じないけど――。こんな男がいた、ということ…

『熊から王へ』について

GFへ 「カイエ・ソバージュ」第ニ巻を読み終えて、なにか満足感があって、一息いれています。 「熊から王へ」で語られていることは、自然霊の具現であった熊から首長をへて、権力社会(王)が生まれてきた過程の物語なのだが、いかにもそうであったろうと思われる…

「お嫁さんにしたい人」にまた会えた

GFへ 昨日はひさしぶりにペラペラとよくしゃべった。たまたま迷い込んだ車が通れない路地のそば屋は大発見だった。――もう一度行けるかどうかは怪しいけど――今宿まで帰り着くと、首や肩が軽くなっているのに気づいた。たぶん機嫌もよかったのだろう、家の絶…

非情といふこと

GFへ また、C・フランクを聴いている。 フランクの音楽は、音楽だけでつくられている。それ以外の夾雑物がいっさいないことの爽快感が聴く者をワクワクさせる。じゃ、その夾雑物とは何だ? それを考えていた。 ストーリー? 論理? メッセージ? 意味? どれも…

やっぱりフランク

この2週間ほど、まともにものを考えていない。 ひとつには、どうにも体調がよくなくて、禁煙していることもある。なにしろ、ぼーっとしている。が、そうなった理由は、2週間まえの独身の夜に、C・フランクのシンフォニーを聴いたせいではないか、という気…

文学は、絵画や彫刻や、音楽が単独ではできないことを、実現しようとしたのだと思う

GFへ 2010,5,11 今日、坂口安吾『文学のふるさと』を終えた。授業でとりあげたのは三度目。三度目の今回は、授業数3回で終えた。そのうち一回は生徒がよむ時間だったから、実際には2時間で終えたことになる。それくらいでちょうど良かったのかも…

若者よ、円高をめざせ。

2010読書教材より 65年前の話である。日本が戦争に負ける前、1円にどれくらいの価値があったのか知らないので、それは日本史の先生に聞いてほしいが、中国やアメリカとの戦争に負けたあと、日本ではすさまじいインフレが起こった。円が暴落したのだ。月…

つじつま合わせはストーリーではない

GFへ このごろテレビドラマをまったく見なくなってしまった。ひとつには目が弱ってきて、仕事から帰ってきたらもう目をあけているのがつらい、ということもある。しかし、NHKhなどはつけたくなるのだから、何も見ていない、というわけでもない。 理由…

IS氏へ 2009〜2010

IS氏へ 「夢十夜」へのご招待ありがとうございました。おかげで昨年の夏以来ひさしぶりで漱石に再会できました。 実は私はたぶん、昨年夏61歳にしてはじめて『草枕』を読みました。若いころ読んでいたのかもしれませんが、ほんとうに読んだと言える読みかたを…

民主政党が着信拒否をしたらおしめぇよ

読書教材として作りはじめたのに、勢いがつきすぎてボツになったもの。13冊の本 若い頃からずいぶん本を読んだほうじゃないか、と思う。じゃ、本を読むのが好きなのか、と聞かれたら、「いや、むしろ、体を動かすほうが好きだ」と答えそうな気がする。じっさ…

『バカボンド』はいい。

2009,6,19読書教材より 第何号かに、「生物学的な男女の差は0,00001くらいしかないと思う。」と書いて以来、変な所にはまっている。 先日、テレビをみていると、九州でプロを目指している若いミュージシャンたちが集合して競っていた。「こんなに個性的な若…